深紅の薔薇姫に愛を
「”相良さん”?」

「ああ。井上相良っていうんだけど、”悪魔”って呼ばれる人だった」

え、漣ってデビルくんに憧れてるの?……まさか厨二?!

「厨二要素とか全くないから。俺は相良さんに憧れているだけ、」

あたしの心を読み取ったのか、その答えにあたしは内心ハラハラしてる。

「どんな人なの?相良さんって。」

「……強い人だよ」

漣は昔を思い出すみたいに、遠くを見つめた。

「強くて、でも弱い人だった。」


「え?」

「喧嘩はものすごく強いんだよ。昔はここ一帯相良さんのテトリーだったしな」

「弱いっていうのは?」

「精神の話。なんというか、他人が愛されているのを見るのがだめなんだよな」

あたしには、意味がわからなかった。

だけど、少しだけ……この人とは似ているのかもしれないと、思ってしまった。

「だけど、俺にはその”悪魔”と呼ばれる相良さんが憧れだった。」

人には必ずもろい部分がある。

確か、それを琉が言っていた。だから、俺たちはみんなで支え合うのだと。

「俺は桜龍が、かつての”蘭”のようになればいいと思っている。」

あたしの薔薇姫という立場上、暴走族の話題はお盛んに入ってきた。

蘭はその上なく完璧のチームだったらしい。

”異端児”と恐れられる井上相良と、その周りは怪物の園だったらしい。

だけど、一人一人は最高だった。



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