深紅の薔薇姫に愛を
…今戻ってこいなんて言うなら、初めからあたしを捨てないでよ。

「いやっ!あたしは桜姫なんだからっ!」

旅館での日、漣はあたしを姫にしてくれるといった。

それはあたしを護り、ずっとあたしの傍にいてくれるということ。

「……お前が桜姫?」

それは、『お前は薔薇姫なのに?』と物語る目だった。

「お前はどこの姫になろうと、”薔薇姫”であることには変わりない」

柊星があたしに寄ってくる。



そう、あたしは絶対的な薔薇姫。

いつだって、無表情で凛としていて動じない。

これが、薔薇姫だった。

……でも、やっぱり………。

あたしを、麗薇として見て欲しいのだ。


「あなた達といた日々は、あたしにとって最大の宝物だった。
1番、輝いていた」

みんなと過ごす日がとても楽しくて、離れた時はとても楽しみだった。

家の近くに車が通る度、迎えの車かなって期待した。

「でも、今は違う」

今は……みんなが怖い。

1人になりたくない。孤独でいたくない。そばにいて欲しい。

「じゃあ、またあの時の気持ちにさせればいいだけ、だろ?」

「咲夜、そんなに簡単に言うなよー」

ツカサが笑っている。

「さく、確かに大雑把すぎだよー」

吏人も、笑っている。あたしがこわいと思っているのに、彼らは平然と笑っている

「お前は自分を認めてほしいんだろ?俺はとっくに認めてる」

笑っていたツカサが本気の顔をあたしに向けた、

面と向かって『認めてる』と言ってくれるのはすごく嬉しかった。

「もしも、そんなにお前があいつらのほうがいいって言うなら、俺はあいつらが立てなくなるまでやるけど?」

琉があの、冷たい目をする。

……あたしのせいで、誰かが立ち上がることがらできなくなる。

「もしお前が戻るなら、潰すぐらいでやめてやるよ」

あたしに残された選択肢はひとつしかない。

あたしが戻ること。琉はあたしがもどるしかないと分かっていて言っているんだから。

でも、今掴みかけた光を手離したくない。

「いいのか?また、お前のせいで誰かがいなくなっても」

”また”?



あたしの、せいで誰かを傷つける……。

「お前のせいってわかったらもう誰も麗薇と一緒にいたいなんて思わないかもよ」

今まで黙っていた陸が、あたしを説得するように前に出た。

あたしは……あたしは……。

もう、あたしのせいで傷つく、人をみたくない……。

だから……そばにいなくても、せめてまもらせてください、。





「……もどるよ、みんなのところに」
< 208 / 223 >

この作品をシェア

pagetop