深紅の薔薇姫に愛を
あたしは”薔薇姫”であって、”星姫”ではなかった。

理由は分からない。ただ、あの日あたしが我龍の仲間になると決めた日、琉の口からでたのは星姫ではなく、薔薇姫だった。

みんなが笑顔で居られないほうが、あたしは辛い、。

「そう言ってくれると信じていたよ」

昔の優しい目で、あたしを見つめた。

「おかえり、麗薇。待ってたよ」

あたしを、戻してどーしたいんだろうか。

「じゃ、倉庫戻るか」

「でも、あいつが許すか?雫雲が麗薇のこと離さないんじゃないの?」

「それは大丈夫だ」

咲夜の問いかけについて、琉が答える。

「かえるぞ」

彼はあたしの手首を掴んであたしを引っ張っていく。

それはあの夏の日、漣が倉庫に連れて行ってくれた時と同じだ。

あっという間に階段を登って、あたしのいた部屋の前の廊下を通っていく。

いくつか曲がったとき、もうひとつの階段が現れた。

そして、扉を開けると澄んだ青の空が見えた。

白い高級車にみんなが乗り込んでいく。

「琉、あたしスリッパなんだけど……」

「捕まってろ」

琉はあたしの膝の裏に手を回して、いわゆるお姫様抱っこをした。

「ちょ、…琉!」

あたしが驚いて上半身を起こすようにすると、彼は彼の胸板にあたしの顔を押し付けた。

足の長い琉は数歩で車のそばに付き、あたしを車にのせた。

車に乗ったあともあたしのことは離してくれなくて、これは何も言っても意味ないなって諦めた。

さっきいた倉庫の前に向かっているから、きっと雫雲の家の本邸が見えるはず。

「……し、ろ薔薇」

ズキン、ズキン

『お母さんっ!お母さん……』

フラッシュバックする。



『……ふふっ、次はお前だ、麗薇』

狂気ずいた黒い瞳が、あたしをターゲットと捉える、

『…麗薇っ!』

急いで本邸の中庭からでてくる雫雲。

腕の中にお母さんを抱いたあたしに、漣とイマミヤが駆け寄る。

『……未薇、さん?』

『てめぇっ!何してんだよ!』

生まれつきミルクティー色の琉が、”あいつ”に殴りかけようとする。

『……ふっ、喧嘩で俺に勝とうなんてな……』

溢れる殺気。

ムチみたいにしなる腕。

『……うぅ、』

琉のお腹に、あの人の拳が食い込む。
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