深紅の薔薇姫に愛を
……懐かしい。

懐かしい夢を見た。

「おー、思ったよりも早い目覚めだな」

あたしが眠っていたベッドから身を起こして、目の前にいる人に向かう。

「あなた、誰?ここは?ね、菜音は?」

目の前にいた男は黒い長めの髪の細身だった。

普通の人みたいな細さなのに、雰囲気が漣斗や琉、イマミヤ、雫雲と同じ貫禄のある刺すような感じから、総長だと訴えてくる。

「オヒメサマは知りたがりだな」

彼はクックックと顔を背けて笑う。

「…質問に答えなさいよ」

あたしは笑う目の前のやつの胸ぐらを掴み、睨んだ。

「へぇー、我龍に捨てられてあんなにボロボロだったのにこんなに生意気になってるとはな」

「…は?あんた、なんでそれ……」

こいつはあたしが琉たちに捨てられたの、知ってたの?

「改めて、俺の名前は時雨(しぐれ)。」

…シグレ。

聞いたことがある。でも、それは薔薇姫時代だったからもういないと思っていた。

「俺、あんたに倒されてから族作ったんだよ」

「あたし、あなたを倒したっけ?」

こんな細身な人とケンカしたことはないと思うけど。

「覚えてねぇーならいいよ」

それから、口角を上げて。


「……なあ、どこのやつが1番はやく助けにくると思う?」

「……は?」

シグレは、楽しんでいるのだろうか、。

「その前に、菜音のこと、教えてよ!無事なの?」

「……お前が逃げない限りは無事だろうな」

そうやって、さっきみたいにクックックと笑った。

「つくづく下衆ね」

「今の俺には褒め言葉。」

殺気と狂気があたしに向けられた気がして、思わず後ずさりする。

「はぁーい、ストップ」

その瞬間、あたしの世界は反転し、首にシグレの両手があった。

「お前、うるさいからこのまま聞いてよね」

足で抵抗しようとしても、さらに体重をかけられ、抑えられる。

「今情報をつかんでるのは、西の雫雲だけ。その他はまだお前たちが連れていかれたことはしらない」

「…!」

このひとは、四天王全員があたしと繋がりがあるってわかっている。

そんなこと、今までは誰にもいってない。だから、知ってるのがおかしい。

「今は雫雲が優勢なんだよなぁ」

ぐんっと一気に顔を近ずける。

「はなしっ!」

「漣斗は来ねぇーかもな」

あたしは、その言葉に目を見開いた
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