深紅の薔薇姫に愛を
「麗薇、行くぞ。」

あたしが菜月にメールしている間に着替えたのか、私服だ。

モノトーンな感じだけど、それが似合っている。

しかも、それに似合う黒髪。

「うん」

あたしは返事をすると、部屋を出た。

すると、面白いことに気がついた。

廊下から左に曲がれば、大広間とか大ホールぐらいの広さがあるスペースがあった

のだ。

しかも、そこからはあたしが通っている廊下に続く階段がある。

さらに奥を見れば、締め切ったシャッターがあった。

「ね、漣。あそこのシャッターのところから行かないの?」

「あそこは下の奴らが使うから、俺らは螺旋階段を使うんだよ。」

下の奴らって、下っ端ってことだよね。

あたしは漣に置いていかれないよう、距離をつめた

しばらく階段より裏を歩いていると、広い抜け道が出来た。

そして、右側には小屋みたいなものがある。

漣は慣れた足取りでそこに入ると、桜と龍が描かれた黒のバイクをだした。

綺麗……。

あたしはそう思った。

桜と龍が交差して、1つのマークみたいにもみえる。

「このバイク、かっこいい……」

「だろ。桜龍の総長は代々これを使うのがしきたりなんだよ。」

漣が軽々しくバイクに跨った。

ふわりと飛び乗る彼は、まるで昔のあたしを見てるようだった。

「乗れ。」

そう言われて、あたしもバイクに跨った。

バイクを跨ぐのは、琉のバイクで慣れている。

ほかのひとのバイクも乗ったし、大体のバイクは乗れる。

「準備完了だよ。」

あたしは微笑んだ。

「まだだ。」

そんな声がすると同時に、あたしの頭に重いものが乗っかった。

「お前はメット被っとけ。」
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