深紅の薔薇姫に愛を
黒のヘルメットを被らされた。

「行くぞ。」

前から漣の声が聞こえたと思えば、バイクは発進していた。

風が気持ちいい。

色んな景色が見えてくる。

普通のスピードであたしが怖がっていないとわかったのか、漣は少しスピードをあ

げた。

あたしはぎゅっと漣にしがみついた。

違うと、分かっている。

………なんで、忘れたいのに琉との思い出が出てくるんだろう。

漣と琉は違う。

一緒になんて、したくない。

でも、漣といれば思い出すのはいつも琉との日々だ。

どうして…、

忘れたいのに、忘れられないの。

あたしはナビの役割をして、自分の家にいく。

家につけば、漣は少し驚いた顔をしていた。

「漣、上がってリビングにいていいから。」

今なら、きっと誰もいない。

あたしは急いで階段を駆け上がり、部屋に入る。

そして、ありったけの服をカバンに詰め込んだ。

このまま、ウチを出れたらいいのに。

こんな冷たい家、楽しくも何ともない。

最終的に、出来たカバンは2つ。

「漣、ごめん。待った?」

あたしが、荷物を持って漣の場所にいくと、

「荷物、多いな。」

と苦笑された。

「待ってろ、千紘呼ぶから。」

どうやら、千紘が車で荷物を運んでくれるらしい。

千紘に謝らなきゃな。
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