深紅の薔薇姫に愛を
でも、だとしたら”姫さん”呼びも分かる。

だって、龍我のみんなはあたしのことをほとんど”姫”としか呼ばなかったのだから

下っ端も、あたしの名前を呼ばなかった。

『”麗薇”って呼んでいいよ』そういった時も、遠慮された。

距離を置きたいのか、一線を引きたいのか分からないけど、

せめて、あたしの存在があると分かるように、”麗薇”と呼んで欲しかった。

自分がそこにいていいのだと、分かるから。

凪沙くんは”華王麗薇”と呟いたきり、顎に手を当て考えているばかり。

「凪沙、くん?」

”薔薇姫”と言われたくなくて、あたしは小さな声を出した。

「あ、あ。すみません。」

「あたしの、名前がどうかした?」

お願い、あたしのことを知らないでいて、

「いえ、なんでもないです。」

なんか、うまくはぐらかされた気がするんだけど……。

「遙真が今日は傘下のグルーブができた日って言ってたけど、どのチーム?」

「青の特攻服のところです。……雷神っていうらしいですね。」
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