深紅の薔薇姫に愛を
振り返り、凪沙くんを見るけどもう居なかった。

……一瞬の幻みたいね。

「麗薇、早く乗れ。」

上から漣の声がして、彼はあたしを車に引き上げる。

黒を基調としていて、前の千紘と乗った時とは違う車。

運転手さんも違って、総長用の車なんだと確信した。

車の周りには、赤、青、白とかカラフルな特攻服を身に纏うバイクに乗った人が埋

め尽くす。

それはまるで、要塞だ。

ブルルンっ!

とバイクのふかした音が響き渡り、遠目に見える千鶴と千紘が荒い運転で交差する

「あぶない……」

あたしが思わず呟くと、漣はその声を拾ったみたいで、

「スリリングだろ。」

そういって口角をあげた。

普段の千鶴からは考えられない運転。

千紘はそれらしいんだけど。

大河は後方にいるみたいで、こっちからは見えない。

横に座る漣の顔は、少しばかり楽しそうにみえた。
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