深紅の薔薇姫に愛を
ドキドキする心臓……。

漣の膝に乗っているという不思議感と照れ。

漣が何も言わないようだから、あたしもなにも言わず膝の上に座ったままでいた。

この車の窓は少しぼやけた感じになっている。

だから、外からの光は少しカットされる。

でも月は見える。

まん丸で、金色の月。

それはあたしを導いてくれる標識……?

分からない、どうすればいいのだろう。

漣の膝で固まるあたしと平然な漣と、静かな運転手。

なんか、おかしいよね……!

ガラッ

車のドアが空いて、大河が来る。

あたしは光の速さで漣から離れる。

「……おい、」

呆れたような、びっくりしたような、分からないような声で漣はあたしを呼ぶけど

気にしない。

「漣斗。」

え、

今、大河漣のこと”漣斗”って呼んだ……?

いつも漣なのに。
< 57 / 223 >

この作品をシェア

pagetop