深紅の薔薇姫に愛を
手で飲み物を飲んでいる仕草をして、あたしのほうに向くそのひと。

「あ、俺、慧っていいます。よろしくお願いします、麗薇さん、」

この人が、あたしを”麗薇”と呼ぶことにとても安心している、

人に過去を知られたくない──────、

そうして、あたしはずっと境界線を引いてきた。

親密にならないように、嫌われないように。

ただ、あたしはお人形さん。
< 63 / 223 >

この作品をシェア

pagetop