深紅の薔薇姫に愛を
髪色と、髪の長さを変えたい。

あのひとが愛したあたしを、あたしの面影を抹消してやりたい。

できることなら、壁にペンキを塗るようにあたしに違う仮面を付けてやりたい。

できることなら、”華王麗薇”とは違う人間としていきたいの。

「髪、切りに行くか、」

「え、いまからでも大丈夫なの?」

普通は予約して、その時間に行くんじゃないの?

「大丈夫だよ、麗薇。」

横から千鶴があたしの顔を覗き込み、そう言った。

あたしが髪を切りに行くのはみんなで動くらしく、出かける準備が始まった。

あたしは洗面所で歯を磨く。

胸か、胸より少し長い、セミロングにしようか。

髪は何色にしよう。…………あ、そうだ

あの人が嫌いな、あの色にしよう。

これは、あたしのあいつへの当てつけだ。

あなたが好きだったあたしの姿はもうないよ、と言いたいのだ。

そして、あなたがいなくとも、あたしは生きていけると言いたいのだ。

歯を磨き終わると、呆然とあたしは髪をとく。

意味なんてないけど、あたしがすきで伸ばしていたからいまになって少し惜しいと

思っている。

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