深紅の薔薇姫に愛を
感じる視線は全てあたしに向けられたもの。

羨ましがられていることと、まだあたしを知らない人たちからの好機の視線。

もう仲良くしているのかという感嘆。どうしてなのかという疑問。

いろんな意味を持つそれが、あたしに向けられている。

桜龍のみんなはこんな数の好機や何らかの感情の入り交じった視線に耐えているの

だろうか。そう思うと、なんかすごいと思えてきた。

……あたしだったらきっと耐えられないだろうな。

薔薇姫だった時も、視線は半端なかった。だけど、琉がなるべくあたしを視線から

隠していてくれていたから、そこまでは感じなかった。きっと、あたしが琉ばかり

をみていたからだ。

あたしはちょこまかと彼らについて、昇降口を目指す。

桜龍の女子からの人気は底知れぬのか、この学校の大半の女子がこの周りに群がっ

ている。

そして、彼らの名前をよぶ。

『漣斗さん』『大河』『千紘くん』『千鶴くん』『遙真さん』。

あたしには、『誰?』という視線が飛んでくる。

漣と遙真がさん付けなのは、きっと怖いからだろう。

特に遙真は女嫌いだから、女の子への態度はほんとうに悪い。

知り合って数日のあたしにも、時々厳しいことがある。

ここにいる女子たちにとって、あたしはなんなのだろうか。

あの時と同じように、邪魔者扱いを受けるのだろうか。

そして、あの時と同じように大切な人達と大切な想いを失ってしまうのだろうか。

……そうなってしまったらと考えると、震えが止まらなくなる。

あんなことには……もう、絶対になりたくないの。
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