深紅の薔薇姫に愛を
前を歩く彼らはと言うと、当たり前のように屋上ルートに進んでいっている。

あんまり教室にいないのはこれか。

あたしも当たり前ように彼らについて行くと、屋上のドアを開けた。

ここにくるのは、大河に頼まれて会ったとき以来だ。

もう、そんなに戻ってくる感じはしない。だから、きっと大丈夫。

太陽で照らされたそれは、影と光を産んでいる。

光は眩しく、あまりにも明る過ぎるものだった。

影は乏しく、あまりにも冷たい。

あたしは端にカバンを置くと、フェンスにもたれかかった。

そこは日が照りつけていて、暖かい。

だけど、今は夏だからすこし暑くもある。

みんなはというと、影で涼んでいる。

半袖のワイシャツを着ていても、すこし暑いと感じるものだった。

「………暇だな、」

大河がそう呟く。ひとりでに呟いたのか、誰かに返答を求めているのかわならない

けど、あたしには返答を求めているように聞こえた。

「……そうね。」

あたしがそういった直後に、誰かのスマホがバイブし、着信音がなる。

いち早く反応したのは漣で、それは漣のものだとわかる。

メールだったのか、それをみると顔を顰めている。

……なにか、まずいことでもあったのだろうか。

「漣、どうした?」

千鶴が駆け寄っていくと、千鶴まで顔を顰める。

それで大河達は察したのか、大河が『行け』と言った。

あたしにはなんなのか全然分からない。

そんな思い当たる節がないし、なにより漣のことを全然知らないから。

いまさら、そんなことを悔しく思う。

「ごめんな…」

そういって、漣は屋上を飛び出した。……行こうといしてる彼の顔が、苦しい、悲し

い、憎い、謝罪……なんて顔にみえたのは気のせいだろうか。

もしかして、”璃麻”って人のところかな?

たしか、前が璃麻ってひとに呼び出されて。そこときは慌ていたんだよね。

で、今日は悲しみの顔。どうしても、あたしが璃麻って人のことを聞いてはだめな

のかな。

「…漣は、どこいったの?」

慌てて屋上を出ていった漣に対して、彼らはいたって普通に過ごしている。
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