罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。
ドアノブを捻り、勢いよく扉をひく。中に入るとそこにいたのは、一人の人物。
「今日も元気だな~海野」
大きな楕円形の机に並べられたパイプ椅子。そのうちの一つに腰かける岩崎先生は、5限の授業中に見た時と同じ格好をしていた。
私はへへっと変な笑みが零れる。
先生に会いたくて。先生と二人きりになりたくて。
生徒会活動がある日、私はSHRが終わったら、誰よりも早くこの生徒会室を目指すのだ。
岩崎先生は生徒会の担当の先生。活動が行われる日は必ずと言っていいほど、先生はこの生徒会室にいるから。
二人きりでいられる時間は限られているけれど、私にとってはこの上ない幸せな時間だ。
「先生~今度のテストやばいよ~」
「そうか~。それならちゃんと勉強しないとな」
「無理~。先生数学教えて」
「何言ってんの。俺は体育と保健しかわかりませーん。多分海野のほうが、俺より数学出来るよ。俺もう覚えてないもん」