罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。


教えてくれなくてもいいよ。

先生と一緒にいられるのなら。

なんて口には絶対出せないけれど。

先生の隣に静かに腰を下ろした私は、鞄からペンケースを取り出した。


「お、そろそろうるさい奴らが来るぞ~」


廊下から聞こえる賑やかな声。その中に混じる少し大きめの声は、どんどんこちらに近づいてくるのが分かる。

そして閉まる扉の前で「じゃーな」という声が聞こえ、それと同時にドアノブが捻られた。


「お疲れーっす。相変わらず海野は来るの早ぇな。同じクラスなんだから一緒に行ってくれてもいいのに」

「だって原川担任の先生に呼ばれてたじゃん。課題忘れた件について」

「ちょ、おま…!」

私の一言に慌てふためく原川。

その理由は簡単だ。


「原川、お前また課題忘れたのか?」


岩崎先生がいるから。




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