罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。
side A
一花とファミレスでご飯を食べてから一週間ほど経ったある日。
私はあの日以来、パラレルワールドの話が頭から離れなくなっていた。
頭の中でいつも考えてしまう。『もしも』の世界を。
もしも、あの人と出会わないで済む選択をした私の世界があるのなら。
その世界の私に聞いてみたい。
今いる世界は、幸せですか?と。
きっと「幸せだ」と答えが返ってくるのだろう
あの人の事を思い出すだけで、私は苦しくて、苦しくて、泣きたい気持ちになるのだから。
なんて考えているとベッドに置いていたスマホが音を立てた。静かな空間に鳴り響く機械音に、一瞬体を震わせる。
課題をやろうと持っていたペンを机の上に置いて、ゆっくりと立ち上がる。誰からだろう、と手を伸ばすとディスプレイに表示されたのは一花の名前だった。
「もしもし?」
『あ、菜々?今大丈夫?』
「うん」
『来週の水曜日にさ、地元の皆…って言っても2年4組なんだけど。そのメンバーで飲もうって話してるんだけど。何か予定入ってる?』
「来週の水曜……夜だよね?」
確か何も予定はなかったと思うけど…。
一花が「うんうん」という返事をしているのを聞きながら、手帳をすぐに取り出し、日程を確認する。案の定カレンダーは空欄だった。
「空いてるよ」
『本当?よかった!新宿なら皆集まりやすいかなって思ってるんだけど、菜々は新宿でも平気?』
「おっけー」