罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。
「岩崎先生!お疲れ様です。って海野もいたのか」
岩崎先生に軽く頭を下げ、自分の机に向かって歩き出す。
「原川何忘れたの?」
「明日出すプリント」
原川は中央の一番前にある自分の机の中を覗き込んだ。
私は知っている。原川の机の中はぐちゃぐちゃで、まるでゴミ屋敷のようだと。積み重なる教科書の間に挟まっていたようで、無理やり引っ張ったせいで端っこが少し破れ「あ」と声を漏らしていた。
「原川ー。ちゃんと机整理しとけよ」
「いつもはもっと綺麗なんすよ!」
「そうかそうか。またチェックしに来るからな!じゃあ二人とも気をつけて帰れよ。また明日」
先生はそのまま職員室へと向かって行ってしまった。
雨のせいだろうか。いつもする先生の香りが、より強く感じたのは。
「はーい。さようなら…」
先生の大きな背中がどんどん遠くなっていく。
細身なのに、しっかりと幅のある肩。その背中に飛びつきたいと何度思っただろうか。
「ほら、俺たちも帰るぞ」