罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。


「岩崎先生!お疲れ様です。って海野もいたのか」

岩崎先生に軽く頭を下げ、自分の机に向かって歩き出す。

「原川何忘れたの?」

「明日出すプリント」

原川は中央の一番前にある自分の机の中を覗き込んだ。

私は知っている。原川の机の中はぐちゃぐちゃで、まるでゴミ屋敷のようだと。積み重なる教科書の間に挟まっていたようで、無理やり引っ張ったせいで端っこが少し破れ「あ」と声を漏らしていた。

「原川ー。ちゃんと机整理しとけよ」

「いつもはもっと綺麗なんすよ!」

「そうかそうか。またチェックしに来るからな!じゃあ二人とも気をつけて帰れよ。また明日」

先生はそのまま職員室へと向かって行ってしまった。

雨のせいだろうか。いつもする先生の香りが、より強く感じたのは。

「はーい。さようなら…」

先生の大きな背中がどんどん遠くなっていく。

細身なのに、しっかりと幅のある肩。その背中に飛びつきたいと何度思っただろうか。


「ほら、俺たちも帰るぞ」


< 39 / 64 >

この作品をシェア

pagetop