罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。
原川はそのまま電気のスイッチを消した。
「わっ。真っ暗!」
廊下の電気も消されているため、この階で明かりがついているのは、26HRから一番遠いところにある職員室だけだ。
その明かりに向かって私たちは歩き出す。
途中に下駄箱につながる曲がり角があるからだ。
「相変わらず岩崎先生にベタ惚れだなー。そんなんだからずっと彼氏できねーんだよ」
「いいもん。私には先生がいるから。未来の彼氏だもん」
原川とは一年生と三年生で同じクラスだったため、他の男子に比べたら仲のいいほうで、私が岩崎先生の事を好きなのも知っている。
正確に言えば、私が岩崎先生の事を見すぎていたせいでバレたのだけれども。
「ってか原川、先生に彼女いるか知ってる?」
「知らねーよ。興味ねーし」
下駄箱について、ローファーを無造作に床に置く。静かな底に置いた時の音が大きく響いた。
「早く大人になりたいな~」
「なんで?」
「そうしたら先生と付き合えるかもでしょ?」
階段を二人並びながらゆっくりと降りる。ここの右側を見下ろすと、ちょうど女子の部室が見えるのだけれど、時間が遅いせいか他の人の姿はもうなかった。