罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。
流された私は、入ったドアとは反対側まで押し込まれていった。
「わ……っ」
バランスを崩し、知らない人の足を踏んでしまった。慌てて体制を立て直し、肩にかけていた小さなショルダーバッグを自分のほうへ引き寄せる。
「すみ、ません……っ」
こんな事ならもうちょっと早く家を出るべきだったな。
『入り口付近のお客様お荷物を~…』
車内アナウンスが流れる。やっと出発か、と思い顔をあげた。
「「……え」」
それは、ドアが閉まるのとほぼ同時だった。
「……翔……?」
「……海野……?」
私が。
彼が。
6年ぶりに、お互いの名前を呼んだのは―――。