罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。


時が止まる。とはまさにこのこと。

私同様、驚きを隠せていないポカンとした彼は三白眼で私を見る。

交わる視線。戸惑いを隠せない黒い瞳に私が映る。まるで魔法にかかってしまったかのように、視線を逸らす事が出来なくなってしまった。


現実の世界ではきっと0.1秒の出来事なのかもしれない。

けれど私にはとても長い時間に感じた。


「きゃっ」


出発したのと同時に、電車が大きく揺れた。魔法が解ける。

不安定な足場の中、重心がずれて私の体も傾いた。


―――――が。


「危ね……っ」


力強い手に、腕を掴まれた。



「……翔……」

「ほら、こっち来い」


――――その手は、私の知らない手だった。


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