罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。


翔は自分が立っていたドア付近の一番端の場所を譲ってくれた。

翔が立っていてくれたおかげでスペースはきちんと確保されているし、何より、私の前に翔が立っていてくれているおかげで、他の人に押されることも無くなった。


「ありがとう……」

「……おう」


低い声。

高い背。

茶色の髪。

ピアスの穴。

大きな手。

筋肉質な腕。


全部、私の知らない翔だ。




< 49 / 64 >

この作品をシェア

pagetop