罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。
「また来月ね!」
そう言ってファミレスを出て、一花と別れた。
一花はこの後講義があると言うので、そのまま大学へと向かっていった。
私は一花とは反対方向に歩き出す。新宿駅の南口はすぐに見えた。
相変わらずここは、人の数が多い。初めてここに来た時はその多さに驚かされたのを今でも鮮明に覚えている。
信号が変わる。私は人とぶつからないように、うまく交わしながら改札へと向かい、中央線下りのホームを目指す。
階段を上がるとちょうど電車が来たところだった。オレンジ色に塗装された電車が、目の前でゆっくりと止まり、音を立てて扉を開けた。
幸い帰宅ラッシュより少し早い時間のため、座ることが出来た。
スマートフォンにイヤホンを繋げ、お気に入りの音楽を流したところで、ふと、一花の言葉を思い出す。
『パラレルワールドってあると思う?』
一花の言葉が頭の中をグルグルと回る。
今、この瞬間も、例えば別世界では、私だけど私じゃない人がいて。
それは必ずしも一つではない。私は生まれて20年、何度もいろいろな選択をして、今の私がいる。そのたびに、別の世界は生まれる。
別の世界の私からしたら、今私がいるこの世界こそが別世界なのだ。
だとしたら本物の私は、どこにいるのだろうか。なんて。
あ~…もう。考えすぎて分けわからなくなってきた。