罪を犯した織姫と、傷を背負った彦星は。
少しだけスマホの音量を上げる。
窓の外を見ると、立ち並ぶビル群が。
地元とは違う景色にも、もう慣れた。
『いつの自分に戻って、選択を変えたい?』
過去に戻ることは、きっと、科学がどれだけ発展しても難しい事だと思う。
だけど、もしパラレルワールドがあるのなら。
違う選択をした世界だけじゃない。未来の私の世界。過去の私の世界。きっと沢山の次元がこの世界にはあるはずだ。
その中で選ぶ次元はただ一つ。
過去の私の世界。
もしも、過去の私の世界が、この瞬間も今の私とは違う場所で存在し、これから私と同じ道を進もうとしているのなら。
高校三年生の〝私〟へ伝えたい事がある。
…二年後、彼の隣に居るのは、私ではありません。
だから、どうかお願いです。
彼から、幸せを奪わないで下さい。
あの時の私とは、別の選択をしてください。