恋をした私達の秘密
放課後

一日の授業を終えて、もかと里は部活へ、私は教室で本を読んでいた。
誰もいない教室での読書は、静かだから集中がてきてとても良い。
私は、この時間がとても好きだ。

窓からは、夕日が差し込んできて少し眩しいけれど、なんだか温かい何かに包み込まれているような…そんな不思議な感覚をもってしまう。

「い、…今泉さん?」
静かだった教室に優しい声がやけに響いた。

この声は…

「河野…くん?」

逆光ではっきりとは見えないけれど、声からして河野くんだ。

「まだ残ってたんだね。何してたの?」
「本を読んでいました…その続きが気になって…」
「ふーん…それ、面白い?」

そう聞きながら私の席に近づいてきて、前の席の椅子を引いて座った。

「あ、えっと…私は、好きなんですけど…」

「…そっか…」

「面白いかと言われたら、分かれると思います。」

そのまま河野くんは席に座ったまま帰ろうとしない。

「河野くんは帰らないんですか?」

「あ、邪魔しちゃった?ごめん…」
「そういうわけではなくて…何か用事があったんじゃないのかなって思って…ごめんなさい…」

「いや、…用事はないんだ…」

「そうなんですか?」

てっきり、用事があったから来たのかと…
じゃあなんでここに?

「今泉さんって、実は人見知りだったりする?」
「えっ!?…な、なんで…わかったんですか?」

「話しているとどこか緊張しているように見えたから。
…あ、気を悪くしたらごめん…」

「そんなことないです!」

それに…

「河野くんはすごいです。…私と違って、友達もたくさんいて、勉強も努力して頑張っていて、先生からも周りからも信頼されています。私も河野くんみたいに頑張らないとって思っているんです。だから、河野くんは私の憧れです!」

「…っ…」
「あっ!急に変なこと言ってごめんなさい…」
「いや!違う!…ただうれしくて」

「?」

「そんなふうに言われたの初めてだから。 でも 俺も今泉さんのことすごいなって思う時たくさんあるよ。……言わないけど……」

ボソッと最後が呟くように言ったけど私の耳にははっきりと届いた。

「な、なんで言わないんですか?」
「…だ、だってなんか恥ずかしいし…」
顔を赤らめて小声で言う。
こんな一面もあるんだ。
顔を赤くして恥ずかしがる、教室ではあまり見ることができない姿だ。
おかしくてクスッと笑ってしまった。

「笑うなよ…恥ずかしいじゃん」

「ごめんなさい…でも、かわいいなって思って」

「そういえば今泉さんって俺と帰る方向一緒って知ってた?」
「そうだったんですか?知らなかったです…」

一緒に帰りたいな…なんて、河野くんにも用事があるだろうし…

「よかったら一緒に帰らない?」
「え?…いいんですか?」

「うん、そのためにここに来たし…」
本を鞄に入れ帰る支度を済ませる
河野くんも帰る準備を済ませると一緒に下駄箱へ行き、帰り道を歩く。

な、なにはなそう…

「河野君って好きな人いるんですか?」
「え?」
「え?」

って、何聞いてんの私??

「好きな人かー、今泉さんは?」
「私はいないです…できたらいいんですけど…」

恋をしたらきっと結構楽しいと思うんだよなー
普通の生活が輝いて見えて…

「憧れます…」
「そっか…」

「俺はね、いるよ…」
「え?!」

「そんなに驚く?そりゃあいるよ」

「どんなひとなんですか?」

「どんな人かー…… 頑張り屋さんだよ。努力家で、一生懸命で優しくて、誰よりも周りのことをよく見ている。最初は憧れだったけどいつの間にか好きになってた。」

好きな人を思い浮かべているのか、河野くんはとても優しい瞳をしている。

「まるで河野くんみたいですね。」
「え?何が?」

「その好きな人です。河野くんみたいだなって思ったんです。」

河野くんはその好きな人に憧れて、その子をお手本として生きている。
好きな人って、その人をうつす鏡なのかな?

そう思うとなぜか悲しい気持ちになった。

「いいですね…恋。」

「いつか、今泉さんにもできるよ。」

「はい!あ、私河野くんの恋応援します!!」
「ありがとう…そう言ってもらえて、嬉しいよ」

「私の家ここなんです。」
「俺もあと少しだから、…また明日。」
「うん。」

「あのさ、明日はさ…」

家に入ろうとしたとき、河野くんに話しかけられた。

「なんですか?」

「明日は、敬語なしで話してみない?」

次の言葉を聞いて私は、胸が大きく高鳴った。


「友達…だからさ」

なに…?
なんか、胸がキュウって締め付けられるような…
病気かな?
少し苦しかったし…
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