キミへの想いは、この声で。

「あー、そうかよ。

だったら、もう二度と聞くな」


フンと鼻を鳴らした彼は顔を背けると、隣の席に座る颯太くんに話しかける。


「颯太。お前は大丈夫か?」


「直樹……」


「……大丈夫じゃねーよな、やっぱ」


今にも消え入りそうな颯太くんの声にふぅ……、とため息をこぼす徳原くん。


『徳原くん、大丈夫?』


「…………大丈夫」


私の手話を読みとることができない彼は、手話マスターの優乃ちゃんに訳してもらって、私に返事を返してくれた。


優乃ちゃんに通訳係になってもらうのは申し訳ないと思うけど、優乃ちゃん本人に聞いてみれば気にしなくていいと優しい笑みで言われた。


……本当に、今の私には優しい人しかいないな。


それなのに、どうして私はすぐに信じることができないんだろう……。

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