キミへの想いは、この声で。
story*17 キミがついた優しいウソ
【side 茜】
藍色の空の下、月の光を頼りに私は走った。
自分がどこに向かって走っているのかはわからない。
ただ、ズキズキと後頭部に痛みが走る。
……やっぱり、ひーくんは颯太くんの双子のお兄さんだった。
世の中は残酷。
こんな偶然あってほしくなかった。
「茜……っ!待って!」
すぐ後ろから、私を呼ぶ声が聞こえる。
……ねぇ、颯太くん。
颯太くんは知っていたの?
私の話すひーくんは、キミの双子のお兄さんだって。
……知っていたの?
もし知っていたなら、私は──……。
──パシッ。
「茜……っ!やっと、捕まえ……」
キミのことをどれだけ悩ませた──?