キミへの想いは、この声で。

「茜、どこに行くの?」


階段を下りていると、廊下を歩いていたお母さんが私を見つけた。


「颯太くんの家。優乃ちゃんや徳原くんもいるんだけど、声の出せる私と話がしたいなって思って」


「そう……、わかったわ。

……そのミサンガ……」


お母さんは私の腕についているそれを見て目を細める。


……やっぱり、お母さんは覚えているよね。


「うん。……ひーくんにもらったミサンガ」


ひーくんのことは、お母さんも知っている。


……彼が私にしたことも。


「あのね、お母さん」


「なに?」


「ひーくんはね、私をいじめたくていじめたわけじゃないんだって。

私へのいじめがこれ以上エスカレートしないように、ある女の子と話をしたんだって。

そこで私を傷つければ、いじめをやめるって言われたらしいの。

……ひーくんは優しいから、私を助けるために、私に嫌われるようなことをしたんだって」


話しているだけでも辛い。


お母さんの表情も悲しいと切ないが入り交じったものになっている。

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