キミへの想いは、この声で。

「そこのふたりなにしてんだよー」


手洗い場付近から、からかうような男子の声が聞こえ、私と颯太くんはパッと手を横に戻す。


廊下にいた他の人たちにもその声は聞こえ、私たちに鋭い視線が向けられた。


……このままじゃ、また変な誤解されちゃう。


もう二度とあんなこと起きてほしくないけど、今の状態ならなりかねない。


どうしよう……。


「茜、そろそろ教室戻ろっか」


落ち着いた様子で私に優しく微笑みかける颯太くん。


「そうだね」


みんなの視線が痛いけど……、このままここにいるわけにはいかないよね。


そう思い直した私は、颯太くんの後ろを少しだけ距離をとり歩いた。


教室に戻ると、固まっていた女子グループはいなくなっていて、代わりに優乃ちゃんが私の斜め前の席に腰かけていた。

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