キミへの想いは、この声で。

「……颯太には、本め……」


──キーンコーンカーンコーン。


優乃ちゃんがなにか言いかけたその瞬間、スピーカーからチャイムが鳴り響いた。


ハッとして、時間割表の上に掛けてある時計に視線を移す。


気がつけば、もう長い針が三十分を指していた。


「あーあ……、チャイム鳴っちゃった……。

ごめん茜、私席戻るね」


「う、うん」


申し訳なさそうに謝ると、優乃ちゃんはイスごと自分の席に戻った。


チャイムが鳴り終わってもなお、騒がしい私のクラス。


女子の口からは、バレンタインに関することばかりこぼれてくる。


……そういえば、優乃ちゃんはさっきなんて言おうとしたんだろう?


「こら、もうチャイム鳴り終わってるわよ。

早く、席に着きなさい」


ガラッと前の扉が開いたかと思うと、柏木先生が困った顔を浮かべながら、教室へと入ってきた。

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