キミへの想いは、この声で。

そんなことを思いながら、私は彼の席へとやってきた。


イスを少し離れた場所に移動させると向かい合い、蓋を開けて中からトランプを取り出した。


「じゃあ、俺が黒色のほう混ぜるから、佐藤さんは赤色のほう混ぜてくれる?」


そう言われて、彼から赤色のトランプをすべて受けとる私。


どうやら、スピードをするみたい。


トランプの切る音が教室中に響く。


ある程度混ぜたところで、私は机に四枚だけトランプを横一列に並べた。


彼も同じように並べ、ふたりして残りのトランプを構える。


とそこでふと思い出す。


あっ、私……、〝スピード〟って言えない……。


チラリと彼のほうを見ると、彼もそのことがわかったのか、優しく微笑む。

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