キミへの想いは、この声で。

「……茜、今日もしかしたら……」


「ん?」


──雨が降って、チョコを渡せなくなるかも。


そのことを伝えたいのに、声が出せない。


「……今日、もしこの場でチョコを渡せなくなったら、茜はどうする?」


……こんな遠回しな言い方をすれば、茜を混乱させちゃうのに。


私の質問に茜はうーんと頭を捻ると、口角を少し上げて口を開いた。


「そのときは、別の日に渡すよ」


別の日……。


そっか……。その方法があったね。


「わかった」


茜に一言そう返すと、私は曇り空を見上げながら、ふたりのことを待った。


ポツポツと小雨が降り始め、先程は気づいていなかった茜も雨の存在に気がついた。

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