キミへの想いは、この声で。

「今のウソ。茜は、私がいないあいだに颯太にチョコ渡しな。直樹が来たらとか考えなくていい。

渡し終えても、教えに来たりしなくていいから」


「優乃ちゃん……」


茜が不安そうな瞳で私を見つめる。


私はその瞳に心の中で『大丈夫だよ』と声をかけると、そのままふたりに背を向けて、入り口に向かって歩きだした。


入り口を出たあとは右に曲がり、そのまま次の曲がり角までまっすぐ歩いた。


曲がり角で足を止めた私は、そこで直樹のことを待つことにした。


しばらくして、向こうのほうから、ショルダーバッグを身につけた黒い服の男子が歩いてきた。


「遅かったね、直樹」


「優乃……、悪かったな」


本当はお説教したいところだけど、今日だけは見逃してやるか。

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