キミへの想いは、この声で。

「ていうか、優乃と直樹遅いよなー。

なにしてんだろ?」


「うーん、どうしたんだろうね?」


なんて、本当は訳を知っているけど、知らないフリをする私。


そろそろチョコを渡さないと、ふたりが来ちゃうよね……。


「あの、颯太くん!」


「ん?」


入り口付近を見つめていた彼が、優しい笑みで私のほうを振り向く。


不意打ちだったからか、胸がドキンと音を立てる。


顔がカッと赤くなったのを感じた私は、それを隠すように、俯きながら鞄の中からチョコを取り出す。


透明なちいさなラッピング袋に包まれたそれを颯太くんの手のひらにちょこんと乗せる。


デコレーションを施された三つのカップチョコを颯太くんは目を丸くして驚いた顔をした。

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