キミへの想いは、この声で。
それがなんだか新鮮で、俺は隅々まで見ていった。
机の上のたくさんの書類、ガラスでできた棚の中にあるフラスコなどの実験道具、メモ程度に使うようなサイズの黒板。
「スゲー。準備室って、こんな感じなんだな」
俺が感心するように言うと、先に指定された場所に段ボール箱を置きにいった彼女がクスリと笑った。
「え、なんで今笑ったの!?」
〝あ、ごめんね。子どもみたいだな、と思って〟
黒板に白いチョークで書きこむ彼女。
俺が日常会話以外にも手話ができれば、彼女にこんな苦労はさせないんだけどな。
なんて、少しだけ思ったり。
「そういう佐藤さんは、驚いたりしないの?」
俺の質問には答えずに、寂しげに俯いた彼女の口が静かに動く。