キミへの想いは、この声で。

い、いーく?


頑張って口の動きを読もうとしたけど、読唇術 (とくしんじゅつ) を持ち合わせていない俺には到底理解ができなかった。


「今、なんて言ったの?」


〝なにも言ってないよ〟


もう一度、黒板に書きこまれる文字。


……ただの俺の気のせいだったのかな。


そんな疑問を抱きながらも、ふたりで準備室をあとにすることに。


ガチャンと鍵をかけ、その場を去ろうとする彼女。


「あっ、佐藤さん!」


俺は慌てて彼女の手首を掴まえる。


するとあろうことか、彼女のスカートのポケットからひらりとなにかが床に落ちた。


「あっ、ごめん、佐藤さん。ポケットからなにか落としちゃって……」


慌てて落ちたものを拾い上げようとする俺。

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