キミへの想いは、この声で。
story*5 ふたつのミサンガ
【side 茜】
「俺と友達になろうよ」
ゴミ捨てから帰る途中の廊下で、私は彼にもう一度同じことを言われた。
戸惑いを隠せずにいると、彼は一歩だけ私に近づき、真剣な眼差しで私を見つめた。
「……友達になるのが怖いとかとか思ってるなら、俺の手を握って。
そしたら俺が、佐藤さんのなかの恐怖心を取り除いてみせるから!」
その言葉に迷いはなく、はっきりと言い切る彼。
私はそれでもやっぱり、友達になる勇気がなくて。
いつか、失ってしまうかもしれない。
そう考えると、今までと変わらずひとりのほうがいいんじゃないかと思えてきた。
心の奥では彼と友達になりたいと思うのに、私はやっぱり彼の手を握りしめる勇気がなくて……。