キミへの想いは、この声で。

ひーくん……。


……思い出しただけ。


ほんの少し、思い出しただけ。


それなのにどうして私の視界は今……、こんなにもぼやけているのだろう。


──ポタ、ポタッ。


スカートの上に染みがどんどん増えていく。


涙を拭う袖口の染みも、どんどん広がっていって……。


……バカだ、私。


まだ、あのときのこと引きずってる。


もう、半年以上前のことなのに……。


「佐藤さん、ミサンガ見つけ……ってどうしたの!?大丈夫!?」


……あぁ、ほら。


やっぱり、私はダメだ。


だってまた、川島くんが彼に見える。


さっき名前を呼ばれたときも思わずひーくんって、声もなしに呼んでしまった。


川島くんとひーくんは全然違うのに……。

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