キミへの想いは、この声で。

……っ。


昔の記憶が一瞬にしてよみがえる。


「渡すの遅くなってごめん」


震える手で彼からピンク色のミサンガを受け取ると、私の目からは再び涙がこぼれ落ちた。


……なんで泣いてるんだろ、私。


ずっと前に、涙が枯れるほど泣いたはずなのに。


友達なんかいないほうがいいって思うくらい、たくさん傷ついたはずなのに。


それでも私は……。


『茜っち』


まだ、あの人のことで泣いている。


あのときの傷が癒えない。


……きっと、一生忘れられないんだ。


だって、私は未だにあのミサンガを肌身離さず持ち歩いてる。

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