キミへの想いは、この声で。

「あ、ありがとう」


「ん」


つっかえながらもお礼を言うと、彼はそっけなく返事をした。


この人の教え方わかりやすかったけど、怖そうだからあまり関わらないほうがいいかな。


なんて、そのときの私はそんなことを考えていた。


だけどその次の日の朝。


「……はよ」


「えっ、あっ、おはよう……」


たまたま廊下ですれ違った彼に、不意打ちで〝おはよう〟と言われた。


な、なんで今挨拶を……?


昨日のことでってこと?


突然の彼の行動に私は戸惑いを隠せずにいたけど、それからは毎日彼から挨拶をされるようになった。


朝はすれ違うと〝おはよう〟って言って、帰る時間になると〝また、明日〟って言って。


いつしかそんな関係が私と彼のあいだにできていた。

< 60 / 337 >

この作品をシェア

pagetop