キミへの想いは、この声で。

「あ、佐藤さん!」


本人に──!


教室に上がりこもうとした彼女を咄嗟に呼び止める俺。


俺の声に驚いたのか、彼女の肩がビクッと跳ねた。


そっと振り向いた彼女に、俺は意を決して伝える。


「……佐藤さんのこと、名前で呼んでもいい?」


震える声がものすごくカッコ悪かったが、そんなこと考えてる余裕などなかった。


佐藤さんの辛い過去を消し去りたい。


俺が今思うのは、ただそれだけ──……。


静まり返った廊下では、佐藤さんが戸惑いを隠せずにいた。


その長い沈黙のあと、佐藤さんは俯いていた顔をあげ、俺の目をまっすぐに見つめた。

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