キミへの想いは、この声で。

だから俺も同じように笑って。


静まり返った廊下は、その一瞬で優しい空気に包まれた。


「これから、よろしくな、茜!」


俺がいつもの明るさでそう言うと、茜は少しだけ顔を赤く染め、ちいさく頷いた。


そして……、


『こちらこそ、よろしくね、颯太くん』


手話でそう言い、はにかむように微笑んだ。


俺の名前を呼ぶところは指文字と呼ばれるものだったから、口の動きを読んだんだけど。


……少しは俺にも心を開いてくれたのかな。


そうだったら嬉しくて仕方ないけど、きっとそれは半分にも満たないんだろうな。


でも──……。


「あ、教室上がろっか」


いつかは彼女の心を俺が開かせてみせるんだ。


.





.

< 94 / 337 >

この作品をシェア

pagetop