意味のない朝を楽しむコーヒーをインスタントの漆黒でいれてください
ホールドはホールドであって、なま優しい抱擁ではないんだなこれが。

息は締めないけど身動きは取らせない。

そんな羽交い締め状態で、彼が耳に囁いてくる。

「ギブ? そらギブ? ほらギブ? んん?」

「だれ、が……」

ギブするか!

と言い切る前に……

かくり。

首が落ちた。

私は死にました……という設定。

「ん? おーい?」

「隙あり!」

「ぐはっ! ずっ、頭突きっ!?」

一度緩んだ腕から逃げることなど造作もないのじゃ。

「ほらほら反撃するぞほら! ギブ? ギブギブ? ギブって言っちゃえ!」

ベッドのスプリングと一緒に、こちょこちょくすぐられる彼が泣く。

お前の弱点が脇腹なことぐらいお見通しさ。

「ぐっ、ぶはっ、はははっ、も、やめ、やめれっつの……!」

ヒイヒイ言い出した彼。ちょっと目尻に涙が。

今日は勝ったな。
< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop