僕の憂鬱【短編】
父さん的には大満足な出来であるらしく、名前まで付いている。
『トム・ソーヤー※もびっくり!な木の上の隠れ家みたいな洒落たポスト』(※正確にはハックルベリー・フィンがいいらしい)
父さんに期待をしてはいけない。
僕の名前はまだいいほうだ。
特にセンスが必要なものほど、センスのセの字どころか“S”の発音すら期待してはいけない。
そして、ご期待通りなのは頭に“ど”が幾つ付くのか見当もつかない不器用さだ。
よってポストの出来は想像力豊かな皆様におまかせする。
しかも、このポストには父さんのど下手クソな字で家族の名前が彫られたプレートが提げられている。
さすがに漢字には無理を感じたのか、ローマ字である。
僕的には名字は普通一つだけで、家長を筆頭に後は名前とくるはずなのだが、父さんは全員の名前をフルネームで彫った。
これもまた、原因の一つである。