覚悟はいいですか

仕方ない、引き受けたことは最後までやりきらないと

そう自分に言い聞かせ、キッチンに戻ると下準備を再開した
でもショックは抜けきれてなくて、
変に焦ったり逆にぼーっとしてしまい、
段取りはめちゃめちゃ
日付が変わる頃になっても終りそうにない

綾乃さんもこりゃダメだと思ったらしく、
「あとは明日!もう寝なさい」と、
布団に放り込まれた



だけど……

疲れてるはずの体に眠りは訪れなかった

たまにうつらうつらすると、彼との様々な思い出が頭のなかをぐるぐる回りだす

気が付くと目尻から涙が溢れ出し、息が不規則に乱れてくる

隣の部屋にいる後輩たちに聞こえないよう、息を詰めて嗚咽をぐっと抑えた

そんなことを繰り返すうち、だんだんと目が冴えてしまった


しかたなく寝返りを打てば頬に冷たい感触があたる

枕カバーが涙でしっとり濡れていた


天井に向き直り、瞼を閉じるとまたひと筋、こぼれる熱を感じた

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