覚悟はいいですか

「大丈夫だった?」

いつもの優しい声がして、私は今起こったことが信じられなくて礼を見つめる
涙はとっくに止まっていた

「紫織?」

礼が少し焦った声で呼ぶ

「うん、大丈夫……」

呆然としたまま言ったが、安心した途端、急に力が抜けて膝から崩れてしまう
床に座りこみそうになったところを礼が抱き止め、そのまま胸にもたれさせて、あやすように背中をなでてくれた

近すぎる距離にいけないとわかってはいるが、力が入らなくてどうしようもない
礼の手が背中に触れていてドキドキするのに、ぬくもりに心はほっと癒され、さっきまで自分ではどうしようもなかった体の感覚が徐々に元にかえっていく

「少し話を聞かせてもらってもいい?」

礼が遠慮がちに聞いてくる

そうだよね、いろいろ巻き込んでしまった以上、きちんと話さない訳にいかない。できれば知られたくなかったけど、今後のことをも含め、これ以上迷惑をかけないためには、きちんと話さなきゃ……

そう思って頷いたところに、麗奈が血相をかえてやって来るのが見えた

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