覚悟はいいですか
「相手が一般人ならAthenaのガーディアンでも十分だと思うよ。でも堂嶋は力がある上に、紫織に異常に固執している。公彦だけなら大したことないが、父親が絡むと難しいだろう」
サッと血の気が引く
そうだ、2年前もそうだった…
話の通じない相手との話し合いはどこまでも平行線で、落としどころすらない
浴びせられる恫喝と非難の眼に、私も家族も追いこまれた
先の見えない争いの日々を思い出し、気持ちが暗くなっていくーーー
「紫織?」
礼に呼びかけられ、ハッと我に返る
「ううん、何でもないよ」
笑って見せたけど、震えた手を礼は見逃さず、そっと握ってくれる
「俺たちが君を守る、だから大丈夫」
一度言葉を切って、しっかりした声で話す
「こいつらは海棠の内部組織chevalier(シュヴァリエ:騎士)の一員なんだ
俺は海外でいろいろな国の軍に入隊して、修行していた。そこで様々な能力に長けた人材をスカウトし、chevalierを作った
ただ力が強いだけじゃない、いわば海棠の秘密の軍隊みたいなもんだ
だから俺に任せて。紫織のこと、堂嶋に髪の毛一本と言えど傷つけさせないと約束する」
礼の言葉は自信にあふれ、力強い誇りに満ちていた
ああ、その言葉だけで震えは止まり、私は心から安らいだ気持ちになれた
嬉しくて涙が出そう、でも泣いたらまた心配させちゃうから…
私は静かに目を伏せて
「ありがとう」
と小さな声で呟いたーーー