覚悟はいいですか

《side 礼》

紫織は志水の話を聞いて、何やら考え込んでいた
やがて決心したように顔を上げると、前のめりになる志水を制して俺に向き合う

「礼、あなたに聞きたいこととお願いしたいことがあるの。」

「何?」

「ひとつはchevalierのこと、協力するにしてもあまり広く知られない方がいいと思うの。だから私付のガーディアンの幹部に話してみようと思う」

「ああ、そうしてくれると助かる」

「…顔合わせ前はどの程度まで話していい?
会うまではお互いに匿名で、私が繋ぎ役をした方がいいかしら?」

志水を見ると頷いて、会話に入ってきた

「顔合わせの為に日時と場所を設定していただけますか?内容についてはお互いお会いしてから、ということで」

「紫織の事情を知って堂嶋を何とかしようとしてる知り合いがいる、ってことで話はつくかな?」

志水の後を受けて俺が聞くと、少し考えてからしっかりと頷いた

「それで大丈夫だと思う。すぐ、連絡します。でももうひとつだけ」

「お願い、だね?何?」

俺の手を紫織が強く握り返す

「礼、織部会長に会ってほしい
お付き合いしたい程好きな人ができたこと、その人が私の過去を全部知った上で、堂嶋から守ろうとしてくれていることを、きちんと話して会長に礼とのことを認めてもらいたいの
それが今まで私を守ってくれた会社と会長に対するけじめだから。

それに礼は私にとってかけがえのない大切な人だから、ちゃんと筋を通したい」

紫織の真剣な瞳に俺の心臓は打ち抜かれた
俺の居場所を紫織の心の中に見つけた気がして、抱きしめたいほど嬉しくて愛しい

「あたりまえだ。もちろん俺も会わせてほしい!会って必ず認めてもらう!!」

代わりに手を握り返すと、ほっとしたように笑顔を向けてくる

ああ、この笑顔のためなら俺は何でもできる!と強く、強く思ったーーーーー
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