覚悟はいいですか
第四章 試練
1、前夜
礼とchevalierの人達とよく話し合った結果、安全が確保できるまでという約束で、私は志水さんの提案を受け入れることにした
たださすがに役員でもない私が、ドアTOドアでの送迎は目立つので、あまり人目のない会社近くの路地で車を乗り降りし、会社まではそれと気づかれない距離でついてもらうよう、必死に頼んで受け入れてもらった
そうして期間限定の礼との共同生活ーー同棲ともいうーーーが始まった
その週末の金曜日、私は麗奈と久美子と一緒に以前も連れて来てもらったBarにいる
今日は礼に会食があるため遅くなると言われたので、休み明けからしつこく誘われていた麗奈と久美子に付き合うことにしたのだ
「「すっごいイケメン~!」」
麗奈達にジョルジュさんを紹介した第一声
もちろん紹介するつもりはなかったのだが、さすがと言うべきか、華の盾の麗奈は離れて見守っている彼に勘づいた
誰だと警戒心むき出しで問うので、急遽志水さんと連絡して紹介することになった
ジョルジュさんはちょっとへこんだようだが、スマートな挨拶と魅惑の微笑みで麗奈と久美子の目をハートにし、復活した
私達はカウンターへ、ジョルジュさんは少し離れた入り口付近の席に座る
ハイチェアに掛け、麗奈はウイスキーの水割り、私と久美子はジントニックをオーダーする
軽い乾杯の後、早速2人から質問攻めにあう
私は恥ずかしさを抑えながら、礼との出会いから今年の夏に再会したこと、そしてパーティーの後に起きた私の身の回りの変化を話せる範囲で答えた
「なにその急展開!」
麗奈は喰いつきそうな勢いで興奮を隠せない顔をしている
そうだよね…私も自身に起きたことでなければ、アニメか小説かと思うもの
「じゃあ、後は証拠固めができれば、堂嶋を排除できるんだね!
紫織、よかった~、ほんとよかったあ~」
急に麗奈が泣き出すからびっくりした。こんなにも自分を心配してくれていたことに私も胸がジンとしてしまう
「うん、まだ油断はできないけど」
「何言ってんの!天下の海棠がバックについてるのよ。
ボディーガードも腕が立つ人みたいだし、大丈夫よ」
後半の言葉を顰めて言う麗奈に驚いた
「……分かるの?」
「もちろん!身のこなしとかね、どこかの国の軍隊出身じゃないかな…」
目を細めながら言う麗奈の台詞に思わず入口の方を振り向いた
ジョルジュさんはスマホを手に、何食わぬ顔でノンアルコールビールを飲んでいる
私は礼から聞いて知っていたが、ぱっと見はやはりスマートなイケメンにしか見えない