覚悟はいいですか

「礼なら私に頼らなくたって、きっと父や兄達を説得できるでしょ。
それに父はともかく、兄達はすごくシビアで、公私混同は絶対しないよ」

「あ~だと思った!」

顔は残念そうだけど、声はどこか楽しそうだ
その時、ああこの人のそばにずっといたいと強烈に思った
グルグルとした妄想は消え、少しだけ気持ちが前を向く

だからありがとうの代わりに、少しだけビジネスのお手伝いをすることにした

「公私混同はしないから、私も口添えはできないけど…
礼、アポはどうやって取ってる?手紙は書いた?」

「手紙?いや、電話とメールで秘書さんとやり取りしてる」

やっぱり!

「うちの父は”字にはその人の人柄が出る”って信じてるの。もちろん兄たちも。
だから一度きちんと手書きで、できたら毛筆で手紙を出してみたら?
礼ならきっと会ってもらえると思うよ」

「手紙か……。人柄が出るって怖いな
まあ、やってみるか。紫織、ありがとう!」

そう言って額にキスすると、早速自室にこもり、手紙を書いていた
< 154 / 215 >

この作品をシェア

pagetop