覚悟はいいですか
「礼なら私に頼らなくたって、きっと父や兄達を説得できるでしょ。
それに父はともかく、兄達はすごくシビアで、公私混同は絶対しないよ」
「あ~だと思った!」
顔は残念そうだけど、声はどこか楽しそうだ
その時、ああこの人のそばにずっといたいと強烈に思った
グルグルとした妄想は消え、少しだけ気持ちが前を向く
だからありがとうの代わりに、少しだけビジネスのお手伝いをすることにした
「公私混同はしないから、私も口添えはできないけど…
礼、アポはどうやって取ってる?手紙は書いた?」
「手紙?いや、電話とメールで秘書さんとやり取りしてる」
やっぱり!
「うちの父は”字にはその人の人柄が出る”って信じてるの。もちろん兄たちも。
だから一度きちんと手書きで、できたら毛筆で手紙を出してみたら?
礼ならきっと会ってもらえると思うよ」
「手紙か……。人柄が出るって怖いな
まあ、やってみるか。紫織、ありがとう!」
そう言って額にキスすると、早速自室にこもり、手紙を書いていた