覚悟はいいですか

そして昨夜のこと、帰宅してすぐ私を抱きしめながら

「紫織、会ってくれるって」

と、嬉しそうに言ってきた
私も嬉しくなって、微笑み返す

「紫織はやっぱり、俺のmuse(ミュ-ズ:女神)だ!」

そう言ってたくさんキスをしながら私を膝に乗せ、差し出した水色の箱

「開けて、紫織に特別手当だ」

ウィンクしながら渡されて、ドキッと心臓が跳ね上がる
駆け上がる心音をどうにか抑え、白いリボンをほどき、そっと蓋を開けると

プラチナのトゥシューズにダイヤモンドを散りばめたペンダントがキラキラと輝いていた

「気に入った?」

うん、とっても!
嬉しくて声も出せず、代わりに何度も何度も頷いた

礼は箱からペンダントを取り、私の首に手を回して留め金をはめる
そうしてから私の額と額を合わせ、目を見て言った

「これは俺がいない間のお守りだよ。
いつも俺が、紫織を守っている証(あかし)

俺が好きなのは過去も今も、この先も紫織だけ。
俺にはお前しかいないんだ
紫織が望む未来も必ず俺が叶えてあげる。

だから紫織はそのままで、ありのままでいてくれればいい

俺は何があっても決してお前を離さない!」


今まで見た中で一番の真剣な瞳で、礼はきっぱり言ってくれた
その瞳に、私の不安は完全には消えないけど、でも私も決して諦めないと覚悟を決めた

礼ほどの素敵な男性との恋に、大きな障壁はあって当たり前だ
大好きな彼に愛されてる、それだけでどんな困難もきっと乗り越えられる

力がふつふつと湧き水のように湧いてきて、でも心は穏やかな凪のようで


二人で微笑み合い、どちらからともなく唇を重ねる

そっと押し当てただけのそれは、まるで誓いのキスのように厳かで

私の胸を静かに確かな愛が満たしていった……
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